q-BOOK

内容は、ないよう。

おとうさん

今日はおとうさんのお誕生日。

たしか昭和26年生まれなので、・・・いくつだっけな。


うちのおとうさんは、鹿児島にいる。

小さな田舎町の教育委員会で働いている。

子供のとき私は、よく叱られて叩かれたり蹴られたりした。

とても不器用な人だ。


大事に育てられたおぼっちゃんだそうで、

いつもお母さんにからかわれていた。

ミーハーで、新し物好きで、

誰よりも早くプロジェクターやなんとかチャンネルという

ものすごい設備のステレオを買っていたのを覚えている。


西郷輝彦ファンのお母さんは、

『あんないやらしい顔の人たちなんかと一緒にしないで』というのだが、

若いときのお父さんはちょっと、萩原流行に似ていた。

今は船越栄一郎にも似ているような気がする。


2年ほど前、飲み屋で働いていたフィリピンの女の子に恋をした。

ちょうど妹がODやリストカットを繰り返していたころだ。

精神的にも金銭的にも、お父さんの心は逃げ場を求めていたのだろう。

私にもお母さんから泣きながら電話が掛かって来たりしていた。


お父さんがあんまりその子のとこばっかり行くもんだから、

『そんなに一緒にいたいなら、うちに連れてくればいいじゃない』って、

お母さん言ったんだよ。そしたらホントに連れてきて。

お母さんその子にいっぱいご馳走作ってあげたんだよ。

可愛い子だったよ。あんたと同い年だった。


お父さんが夜な夜なその子のとこへ行ってるとき、

『首を吊って玄関にぶら下がっててやろうかと思ったこともあった』

と言っていたこともあったのに。


両親とも公務員で堅い家庭で、うちはそういうのと無縁だと思っていたのに。


女の子が国へ帰って、今はもうそういうことはないようだ。

最近は携帯で自分の顔を写して送ってくるようになった。


いっぱい怒られたし怒鳴られたし手だって上げられてきたけど、

私はお父さんのことは嫌いにはなれない。

いつか鹿児島に帰ろうと思う。