おとうと
私には弟がいた。
健ちゃんという。
『健やかな児』と書いてケンジ。
私とは、確か2つ違いだった。
私が3歳か4歳のころ、死んでしまった。
もともと心臓が弱かったのだ。
県病院の小さな病室で、
小さな小さな健ちゃんが息を引き取ったとき、
大きくうなだれたお父さんの様子を、
今でもハッキリと思い出すことが出来る。
それから何年も過ぎ、
私は今年27になる。
健ちゃんが生きていたら、25歳だ。
これは想像だけど、
たぶん、私よりも妹よりもしっかりした子に育ったはずだから、
もう結婚して小さな赤ちゃんがいるころじゃないかと思う。
実家に帰ったときは、必ずお線香をあげる。
山野のじいちゃんとは、天国で会えただろうか。
3月が来ると、私は19日のことをいつも想う。
健ちゃんの命日。
向こうで健やかに笑っていてね。
お母さんもお父さんも、私も幸代も元気です。