q-BOOK

内容は、ないよう。

ハシゴ前編

病院をハシゴした。


まず、紹介状を書いてもらった日赤病院の乳腺外科に行き、診てもらう。
花屋で働いていたころに、ほとんど毎日お見舞いの花を届けたり、
睡眠薬をしこたま飲みザクザク手首を切った妹が運び込まれたり、
なんやかやと縁のある病院だけど、診察してもらうのは初めて。


まず放射線科に行きレントゲンを撮る。
胸を台の上に乗せて、ひっぱって、挟んで、撮る。
取るに足らない質量の私の胸だが、これがなかなか、いっちょまえに痛い。
正面からと斜めから。しこりのある右胸と、健やかな左胸。
合計4枚撮った。


撮ってもらったレントゲン写真を片手に抱え外科に戻る。
思ったよりも若くて日に焼けた先生が診てくれた。
触診をしたあと、エコーをして、しこりの細胞を少し採った。
細くて長い針を胸に刺し、注射器のようなものでスコスコ吸い出す。
怖くて、胸に針が刺さっている様子は見ることが出来なかったが、
エコーの画像で、胸の中でうごめくきらめく針を見てなんだか衝撃を受けた。


スコスコスコ。スコスコ。痛くないですか?


吸い出し作業をしながら、先生と看護婦さんが聞いてくれる。
泣き顔半分笑い顔半分。痛いー。痛いけど我慢してるんです、ハイ。
10分ほどで吸引終了。
胸に、ぺったんと大きな絆創膏を貼ってもらい服を着て、先生の話を聞く。
悪くはなさそうなんですが・・・と先生は言う。


良性のしこりは、境界線がくっきりとしているけど、
がん細胞というのは、しこりのフチの境界線が曖昧なんだそうだ。


私の胸に出来ているしこりは、乳腺を越えてないし、
(『もしがん細胞だとして、これほど大きければ、乳腺を飛び出してますからね』)
一部分の境界線が少し曖昧になっているのを除けば、
あとはしっかりくっきりはっきりしているので、
9割ほどの確率で乳腺繊維腺腫という良性のものらしい。
とりあえずは心配なさそうだな。
ありがとうございました、とお礼を言って、診察室を出る。
お会計をして、外に出て、私よりも動揺して待っているであろうきはらんに電話。


心配そうな声が聞こえてきたので、かいつまんで今日の経過を話す。
悪くなさそう、というと、良かったなー、と安堵の声が返る。顔が見えるようだ。
きはらんの口癖は『qはいっつも変な病気になるからなー』だ。
失敬だな、キミ。
私もホッとして電話を切り、歯医者に行くべくそのままバスに乗り込む。

・・・
ハシゴ後半へ続く。